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こそけん所長コラム



34. 楽ちん子育て (ベビースリング)

今回は最近ブームになってきた「スリング」という抱っこ布を紹介しましょう。でもその前になぜ「抱っこ」なのかです。
結婚して同居が当たり前の頃は、義母や小姑など自分以外の女性がいて赤ちゃんのお世話を一緒にしていました。赤ちゃんが泣けば誰かが抱っこして、首が座れば誰かがおぶりました。もちろん母親がしてやるのが多かったと思いますが、そのノウハウは受け継がれていました。
高度成長期になり核家族が増えました。
そうなると抱っこするのもおぶるのも母親だけです。慣れないおんぶは避けられるようになり、様々な抱っこ紐が商品化されました。しかし、これらの抱っこ紐は面倒で家ではなかなか使いませんでした。
そのうち「抱っこすると抱き癖がつく」「添い乳は窒息させる」「添い寝は癖になって親離れしなくなる」などということが言われるようになりました。それを信じたおかあさん達は、赤ちゃんにミルクを飲ませて満腹にし、ベビーベッドで独り寝させるという方法でまじめに子育てを頑張りました。当時はこのようにして子育てをしなければ、母親は楽ちんな子育てができなかったのでしょう。でもこの方法の間違いに気づきはじめたのです。
そして最近は「抱っこは大切」「できるだけ母乳をあげましょう」「小さい頃の母子接触は大切」と変わってきました。
赤ちゃんが生まれてから 1 年くらいは子宮外胎児期といい、子宮の袋でくるまれて守られていた (保護されていた) 状態から、くるまれない状態に時間をかけて慣らす大切な時期です。この時期の母子接触が子どもの「安心感」「存在感」に影響すると言われるようになりました (ガンバレ子育てママのシリーズ最初の『子育ての第一歩』参照)。
しかし核家族では「抱っこ」も「おんぶ」も、ほとんど母親がします。そこで親と子にとって「抱っこ」をいかに楽ちんにするか、ということを考えてみると「スリング」がぴったりだったのです。
実は「スリング」は形こそ現在と違っていますが、何千年もの間、あらゆる文化圏で使用されてきました。
今でも一枚の布で小さい人を抱きしめるように大人の胸元で結わえる抱き方は、アフリカやアジアをはじめ地球のあちこちで昔から大切に受け継がれています。日本でも、さらしやありあわせの布 (男性用の兵児帯など) を使って、抱っこ紐、おんぶ紐のひとつとして使っていました。本当は「スリング」は先祖から受け継がれた知恵だったのです。
現在、欧米ではアタッチメントペアレンティング (肌と肌を触れ合わせることで親子の愛着と信頼を深める育児) に最適と「スリング」が高く評価されています。子宮の中から外の世界へ出て不安だらけの赤ちゃんが「スリング」の中で安心して眠っている姿をあなたも見てみませんか。
- 本の紹介 - 石田勝正著「抱かれる子どもはよい子に育つ」