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こそけん所長コラム



new11: タッチング

好きな人に抱きしめてもらうと嬉しいですし、何となくホッとしませんか。
これは、身体をギュッと抱きしめることにより、皮膚の深い場所にあるパチニ小体というセンサーにスイッチが入ります。そして脳がそこからの刺激を受け「快感 (心地よさ)」を感じているのです。
このように抱きしめたり、なでたり、身体を寄せ合ったりすること、つまり「スキンシップ」よりしっかりとした皮膚接触のことを「タッチング」と言っています。
最近は、看護・介護などでも広まってきています。

赤ちゃんが生まれるとすぐに、おかあさんは赤ちゃんにおっぱいをあげたり、添い寝をしたり、抱っこをしたり、おむつ換えをしたりします。この当たり前の育児行動も、いわゆる「タッチング」です。
タッチングは赤ちゃんの脳を発達させ、免疫力を高めると言われています。「抱く」ことの良さはここにもあります。

近年流行のベビーマッサージもタッチングです。どうして流行しているかというと、生活の中で、教わることなく親の本能でしていた「なでる」などの育児行動が伝授されずに、できなくなってきているからだと考えます。
本来は自然とできるはずの母子の触れ合いですが、ベビーマッサージなどのツールを通して教わる時代になったということでしょう。

実は、タッチングは人生のあらゆる場面において必要であり、また無意識に行っている行動でもあります。言葉では伝えられない愛情表現で、それにより相手に「安心感」「存在感」を与えるすてきなものです。

子どもが 3 歳くらいになると、親は知らないうちに何事も言葉ですまそうとしていませんか。「あぶない」「まって」「いけない」「一人でできるね」「〜しなさい」などなど・・・。そして言うことを聞かないと、つい叱ってしまう (怒ってしまうと言った方がいいのかもしれません)。
特に下に弟や妹が生まれた時期に多く目にするように思います。
私の子育て中にも、言葉で納得させようとしていたと思い当たることがたくさんあります。考えてみると、やっと言葉が分かるようになった子どもに、「言葉の意味」が分かるはずがありません。
おかあさんを独り占めしていた子どもの不安な気持ちを安心させてあげるには、言葉ではなくタッチングではないでしょうか。

年齢に関係なく、何となく子どもの様子がおかしいなと感じたら、タッチングをしてみてください。「あなたが大切、あなたを愛している」とタッチングで表現してあげると、不思議と子どもの情緒は安定します。

大きくなるにつれて照れくささがあり、子どもは嫌がるそぶりをしますが、本当はとっても嬉しいと感じています。子どもを根気よく「大好き」と抱いてあげてください。思春期になると「抱く」というわけにはいかなくなりますが、そんなときは「肩や背をなでる」「握手をする」などでもよいでしょう。

親は、いつまでも子どもは子どものままでいて欲しいと思いますが、子どもはいつか自立していきます。
自立しなければならないのです。
そして自立するには「安心感」「存在感」が必要です。
タッチングにより存在感を確認し、自分の未来に向かって「もう大丈夫、支えはいらないよ」と子どもの方から自立していくのです。
親はちょっと寂しいですけれど・・・。こうして自立した子どもが、やがて親が年老いたときに、優しくタッチングを返してくれることでしょう。

(メディカルアイズに掲載)
http://www.medicals-i.com/article/249