マザリー産科婦人科医院は島根県松江市にある産科婦人科医院です。助産師外来や院内助産システムを積極的に行い、妊娠中から出産、産褥までトータルでサポートいたします。気になる事や心配な事などお気軽にご相談ください

こそけん所長コラム



new10: 母子同床 (つまり添い寝)

近年は、入院中に母子が一緒に過ごせる母児同室を取り入れている産科が増えていると思います。私の勤務する医院でも母児同室ですが、母親と新生児が同じベッドで寝る (母親が添い寝をする) こと、つまり母児同床を勧めています。助産院など和式の部屋であれば当たり前のことでしょう。

さて、はなしは十年以上前のこと。当医院を見学されていた、当時 60 歳近いと思われる女性の方 (専門職と思われる) から、こんな質問を受けました。
「おかあさんたちは一緒のベッドで寝たりして、休めないんじゃないの ? 」と。

おそらくこの方の子育てはミルクの全盛期。そして欧米流で赤ちゃんをベビーベッドに寝させる、つまり母子別に寝るということを取り入れはじめた頃です。高度成長期、核家族が当たり前になり、女性は子育てに専念し、隣近所みんなが我先に流行を取り入れ、自分は最先端なのだと自負した時代です。
このような時代に子育てをされた方なので、子どもと添い寝をするということを不自然に感じられたのでしょう。

本来、母親は我が子を守ります。常に自分の側に置いて・・・。
犬や猫も、イルカや鯨にしたってそうです。猿は移動の時も抱いています。
人間も哺乳動物ですから何ら変わらないのです。
つまり添い寝だって自然の育児行動です。

産後のおかあさんたちは、初めは緊張していますが、間もなく慣れ、その姿は我が子を守っている様に見えるのは私だけではないでしょう。
入院中に慣れると退院してからの育児において、とてもスムーズに我が子と接することができます。
そしておばあちゃんには赤ちゃんのお世話ではなく、家事を手伝ってもらうのが一番助かるというわけですね。

実は、欧米でも自分のベッドに赤ちゃんを一緒に寝させるということは当然しています。一人でベビーベッドに寝かせることもありますが、添い乳だって添い寝だってしているのです。ある意味、日本人がベビーベッドの使い方を間違って取り入れたとも言えるのではないでしょうか。

少子化になり、身近に子育ての見本もなく、我が子を出産するまで赤ちゃんを抱く体験をすることも殆どない、という時代です。
子育てに関する事件を見聞きするたびに、母親と赤ちゃんにずっと寄り添ってサポートできる体制の必要性を痛感します。

母子の愛着にはオキシトシンというホルモンが関係します。オキシトシンは、お産の時に大量に分泌します。また、母乳を飲ませると分泌されることも知られています。さらに抱っこなどの育児行動でも分泌が促されているのです。
オキシトシンが多く分泌されることで、母としての本能が刺激され、我が子を「守りたい」「かわいがりたい」という気持ちが沸き起こります。これが母子関係には必要であり、とても大切なことです。

昔ながらの子育て方法の全てが良いわけではありませんが・・・新しい知識を持ちながら古き良きことを取り入れる、これが今の子育てに必要ではないのでしょうか。
健康に問題のない場合、入院中から母子が一緒に過ごし、添い寝や添い乳ができるようになって欲しいと思います。そのために、出産の場で助産師たちが母子に寄り添えるような、余裕ある体制が整うことを願いたいですね。

(メディカルアイズに掲載)
http://www.medicals-i.com/columnist/54