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こそけん所長コラム



60. 日常が宝物

野の花診療所の徳永先生の『「おかえり」日常語の宝物』という新聞コラムに目がとまりました。日常当たり前に使っていた言葉が、老いや病気、事故などで突然その言葉は消えることがあります。臨床場面での日常語を紹介し、深い人生の言葉にも変わる大切な宝物だと書いておられました。

これを読んでいて、母の言う「おかえり」がとっても嬉しかったことを思い出しました。私の両親は当時では少ない共働き夫婦で、さらに祖父母を早くに亡くした核家族でした。小学校の低学年までは住み込みのお婆ちゃんがいてくれましたが、そのお婆ちゃんも高齢となり 施設に移られることになりました。そして私はカギっ子になりました。
小学校から一番先に帰宅するのは末っ子の私です。近所の親戚でカギを受け取り帰ります。その頃サッシの窓でなく、雨戸が閉められ家の中は真っ暗です。誰もいない家は寂しくて つまらなかったのでしょう。いつもランドセルを放り投げて再びカギを閉め親戚に預けると、校庭に行って日が暮れるまで遊んでいました。
そして年月が過ぎ、母が退職する歳になりました (当時はなんと 47 歳でした)。私は中 3 でした。それからは私が「ただいま〜」と家に帰ると、母が「おかえり」と優しい笑顔で迎えてくれるのです。それも毎日です。この時の嬉しかった気持ちは忘れられません。私の宝物です。裏を返せばそれまでがとても寂しかったのだと思います。
近年はカギっ子も増え、そのため延長保育や学童保育もできました。今はそれが普通の生活となってきているのかもしれません。親子どちらが先に帰宅するのかは様々と思いますが、「ただいま」「おかえり」どちらがどちらでも、交わせば気持ちが優しく温かくなります。
親子で、夫婦で、いやご近所さんとも、「いってきます」「いってらっしゃい」「ただいま」「おかえり」と言葉を交わしていますか。何気ない日常語ですが大切な宝物だと改めて思いました。