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こそけんコラム
32. 「イクメン」と「父性」

32. 「イクメン」と「父性」

最近、育児をする男性が「イクメン」として注目されています。
河合隼雄氏著の「父親の力 母親の力」の中に、『いま、若い父親の中に家族を大事にする傾向が出てきていると言われます。それはそれでいいのですが、それは強い父親ではなく奉仕する父親が多くなったということではないでしょうか。本質的には、なお母性的な側面が強すぎて、日本の家族問題を難しくしているのもその点だと思われます。』とありました。

強い父親とは、昔のように威張った怖い父親ではなく、例えば子どもに対して「世間がどうであれ、自分の道を進め。おまえのことはおれが守る」というような態度で接したり、自分の人生観を言動で示し、その言動に責任を持つような父親です。
家庭問題を起こしている子どもが、親から言われたくない言葉は「誰のおかげで飯が食えているんだ」だそうです。このようなことを言わなくても「おれはこういう人生観を持って生きている」というものを持っていれば、親の権威は保たれるのではないでしょうか。

また『自分はこれが正しいと思っているとか、これは絶対に許せないとか、そういうことをはっきり言って、喧嘩になったら喧嘩をすればいい。いまはそういうことを言わなさすぎると思います。いわゆる“ものわかりのいい父親”になろうとしすぎて、かえって墓穴を掘っているような気がします。』ともありました。

子育てには母親の下請けではなく、父親としてのかかわり方も不可欠です。
私は、母親が母性で父親が父性という構図ではなく、家族の中に母性的側面と父性的側面が必要であると思っています。
「物分かりの良い」は、もしかしたら子どもには物足りなく映っているのかもしれません。“イクメン = 母親とまったく同じ”と理解されないことを祈っています。