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こそけんコラム
45. 産科の現状②

45. 産科の現状②

産婦さんの分娩に対する満足感が、その後の育児にも影響すると考え、そのためには産婦さんも妊娠・分娩・育児を積極的に考えて取り組んでも らいたいとバースプランを立ててもらっています。私たちは、その気持ち に寄り添い、より良いお手伝いができるように頑張っています。
ところが今、日本全体で出産できる施設が激減しています。産科医不足、不眠不休の過酷な勤務、医師の補充ができず産科閉鎖、通院中の病院から 分娩は他を紹介すると突然の通達、動揺する産婦と家族。この現状で産婦 さんは自分達の出産をどう思い描くことができるでしょうか。
遠からずこのようになるであろうとは予測されていたことですが、ここ 数ヶ月でかなり深刻な事態となっています。加速していて対策も不可能な のです。その原因の一つに福島県立大野病院事件 (www.kaseki-hp.com/essay/041. htm 参照) があり、産科医を消極的にさせているようです。
亡くなられた産 婦さんは本当にお気の毒で、ご遺族の方々の心中を察するに忍びません。しかし医療者から見ると、なぜこれが刑事事件になったのか理解できない のです。主治医は最善を尽くしたが、残念ながら救命できなかった。その 結果、逮捕拘留されるのでは医師が積極的な医療をしなくなるのは当然だ と思います。
これからの分娩は中央の総合病院に集約され、管理分娩になる可能性が あると考えられます。安全を第一に考えれば、自然に産みたい産婦さんの 気持ちは二の次になるでしょう。まして遠方から産みに来るのであれば、予定の立たない分娩は滞在費用がかさみます。そうなれば計画分娩もやむ を得ないかもしれません。家族や助産所での分娩を希望すれば、緊急時の 対応が遅くなるので安全性が低いと考えなければならないでしょう。
この ような二者択一で、果たして産婦さんの思い描くような満足する分娩がで きるのでしょうか。いや、すでにできない地域もあるのです。