前に戻る

こそけんコラム
new 2: 上の子の気持ち (赤ちゃん返り)

new 2: 上の子の気持ち (赤ちゃん返り)

今回は「上の子の気持ち」について考えてみたいと思います。
最近は子どもを産まない、あるいは産むとしても一人だけという夫婦が多いと聞きます。しかし嬉しいかな、私の周りでは三人四人と産んでおられるお母さんが少なくありません。何とも頼もしい限り・・・というのはまたの機会に話すとして、二人目を妊娠されると、さて心配の種は上の子のことですね。そこでよく相談を受ける内容が、赤ちゃん返りで困るとか、自分の入院中にどうしたらよいか、などです。

さて「赤ちゃん返り」とはいったいどういうことを言うのでしょうか ? 子どもの年齢によっても違うと思いますが、一般にひとりで出来ていたことが手伝わないと出来なくなったり、抱っこをせがむ、母親にべったりするようになったなどです。
でもこれはいつから始まっていつまで続くのでしょう。
これも子どもによって違います。例えば妊娠が分かるとすぐにそうだったり、お腹が目立ち始めてからだったり、産後一年も過ぎて忘れた頃に急に甘えるようになったなど、いろいろあるのです。

ここで考えてみて欲しいのは「赤ちゃん返り」はいけないことかということです。
私は相談を受けたときに必ず、上の子が赤ちゃん返りをすることは当たり前のことで、これが最後のお母さん独り占めの甘えなのだからいけないことではないのよと話します。
そうすると大抵のお母さんは、やっぱりいいのよねと安心されます。ただ困ったことに周囲のおばあちゃん達が心配されるようです。そして悲しいかな、お母さんが入院すると預からなければならないので、お母さんから離れる練習をさせると言われることもあると聞きます。
実は「赤ちゃん返り」には訳があります。
これを理解すれば対応の仕方が自ずと分かるのです。

ではその訳とは何か。
それが「上の子の気持ち」なのです。
第一子は生まれてからずっと両親、特に母親を独占していました。誰にも邪魔されることなく、いつでもお母さんに甘えることができる、相手をして欲しいときに相手をしてもらえる、そういう環境にいます (双子、三つ子の場合は違います)。
ところが次の妊娠が分かると「もうすぐお兄ちゃん」「お姉ちゃんになるんだから」と周囲の態度が変わってきます。
つまり子どもが変わるのではなく、周囲の大人の対応が変わるのです。これは上の子にとっては不安にならずにいられません。だからお母さんにくっつきたがるのです。離そうとすればするだけ不安になり、そしてますます甘えてきます。これを受け入れてもらえなければず〜っと不安ですから、情緒が不安定になることは一目瞭然でしょう。夜泣きが始まったとか、お母さんとでなければどこにも行かないということもあります。

そう、もうお分かりですね。「赤ちゃん返り」を悪いこととして捉えないで、そうか不安なのねとしっかりと抱きしめてあげることが大切なのです。

いろいろな親子を観察していると、実は、お母さんがいつでも受け入れてくれると安心している子どもは、お母さんが寂しくなるくらいお母さん離れをすることがあります。逆に、お母さんが下の子のお世話が忙しくて、上の子をちょっと邪魔だわと思っていると、お母さんの注目を得るためにやんちゃを言っているように見えます。

最近は核家族が多く、また祖父母が遠方にいるという方も少なくありません。出産前後に急に祖父母に預けられた上の子はどんな気持ちになるでしょうか。どうか周囲の方 (祖父母やお手伝いされる方) は「上の子が一番だからしっかり甘えさせてあげてね」と母親を見守ってあげてくださいね。
産後の 1 カ月健診までは、昼間は上の子を預かり、夜は母親に戻してください。そして上の子が 母親に甘えている間は、生まれた下の子をあやしてくださるとうれしいです。

(メディカルアイズに掲載)
http://www.medicals-i.com/columnist/54